なぜガソリンは世界で5倍の格差で売られるのか — 税金が重い仕事をする
原油は同じ商品。だが小売りポンプ価格は23カ国で約5倍の格差。差の80%は税金、ほとんどは欧州の高税率と米国の異常な低税率。
同じ液体、5倍の差
原油はグローバル商品。1バレルがヒューストンを出てシンガポールに着いてもロッテルダムに着いても、価格はほぼ同じ。サウジ・アラムコ、ロシアのロスネフチ、米国シェール — みな同じOPEC+の価格帯で売る。
ところがガソリンスタンドで1リットル買うと、23カ国の格差は約5倍。
最安 vs 最高:
🇮🇩 インドネシア $0.74🇭🇰 香港 $4.16同じ液体。5倍の値段。
安い順トップ10
| 1 | 🇮🇩 | インドネシア | Rp 12,900 | $0.74 |
| 2 | 🇻🇳 | ベトナム | ₫25,045 | $0.95 |
| 3 | 🇲🇾 | マレーシア | RM 4.02 | $1.02 |
| 4 | 🇮🇳 | インド | ₹101 | $1.06 |
| 5 | 🇹🇼 | 台湾 | NT$34 | $1.08 |
| 6 | 🇯🇵 | 日本 | ¥170 | $1.08 |
| 7 | 🇺🇸 | アメリカ | $1.27 | $1.27 |
| 8 | 🇦🇺 | オーストラリア | A$1.84 | $1.33 |
| 9 | 🇧🇷 | ブラジル | R$6.65 | $1.35 |
| 10 | 🇨🇳 | 中国 | 9.35元 | $1.38 |
パターンが見える。OPEC産油国と東南アジアが底。西欧と北東アジアが頂上。米国は真ん中。
格差の80%は税金
卸売り1リットルはほぼ世界共通。差はポンプで生まれる。
スイス1Lの$2.43の内訳: - 原油 + 精製: $0.70 - 流通 + マージン: $0.20 - 税金 (VAT + 燃料税): $1.50
米国1Lの$1.26: - 原油 + 精製: $0.65 - 流通: $0.20 - 税金: $0.41
同じ液体。スイスのドライバーは米国の4倍の税金を払っている。
なぜ高い税を課す国があるのか
3つの動機:
- 財政収入 — 燃料税は脱税が難しい(全取引が記録される)。欧州はGDPの1.5–2.5%をここから徴収。
- 気候政策 — 高いガソリンは走行を抑える。ノルウェー($2.32/L)は価格を高く保ち、EV補助に充てる。
- モードシフト — 東京、ソウル、パリは高ガソリン+良い公共交通で自動車保有を低く保つ。
産油国は安いはず — インドネシアは$0.71
インドネシア1L $0.71。ベトナム$0.93。マレーシア$1.00。
これらは市場価格ではない。政府補助金である。インドネシアとマレーシアは燃料補助に年数百億ドルを支出 — 政治的判断で、上げると抗議が起きる。
ベネズエラはかつてガソリンを$0.01/Lで売った。その後IMF危機が来てボリバルが崩壊した。
為替がポンプ価格を動かす
卸売り原油は世界的にUSD建て。現地通貨が弱くなれば、ポンプ価格は自動的に跳ね上がる。
2022年、トルコリラは60%下落。ガソリン価格はリラ建てで180%上昇。同じ液体、同じ量。
これがガソリンが通貨ショックの最初のシグナルである理由。家賃や食料品より速く反応する。
なぜ米国は例外的に安いのか
米国のガソリンは先進国の中で異常に安い。$1.26/Lは韓国($1.53)、日本($1.08)、EU平均(約$2)を大きく下回る。
理由: - 連邦燃料税: 18.4セント/ガロン、1993年から据え置き - 州平均: 23セント - 合計約10セント/L、EUの約1/15
米国がEU並みの税にすれば、ポンプ価格は約$2.40/L。自動車依存社会では政治的に不可能。
今後5年の変数
ポンプ価格を動かす変数:
- EV普及 → ガソリン需要減 → 税基盤の侵食
- 炭素税 → 欧州が追加$0.20–0.50/Lを検討
- OPEC+供給 → 卸売り価格の変動
- 為替 → 新興市場が最初に直撃される
ビッグマックと同じく、ガソリンは1リットルに圧縮されたマクロ指標である。
データ
globalpetrolprices.comから毎週更新。全23カ国がverified、ソースURL保存。